サロベツ原野。「サロベツ」と聞きなれない単語に加え、「原野」だぞ、原野。
おまけに所在が北海道の北限に近い場所。いいねぇ。俺の好みだ。
大挙して観光客が押し寄せる要素はゼロだろう。俺は人が沢山いる場所は苦手だ。
さて、ざっとサロベツ原野の説明を。
サロベツ原野は日本一の広さを誇る高層湿原(サロベツ湿原)を有している。
1万年前までは海と繋がる湖沼だったが、その後海からは独立し、枯れた草木が泥炭に変わり湿原になった。
2005年にはラムサール条約に登録されたお墨付きの秘境だ。
そんな秘境でも2つの施設「幌延ビジターセンター」「サロベツ湿原センター」がある。
今回は幌延ビジターセンターからサロベツ原野に向かった。
ルートとしては(ビジターセンター)-(長沼)-(小沼)-(パンケ沼)を往復するフルコースを歩こうと思っていた。
しかし、途中で行き止まりになっているとの事。
予算が削られて木道の補修が出来ておらず、そのため途中で行き止まりになっている。今後も補修の予定は無いようだ。
ビジターセンターの男性と交渉した結果、無理をしない事を条件に行き止まりの先に進むことを了承して頂いた。
会話の最後に、まさかのノリで「ヒグマは?」と尋ねたら、軽い感じで「いるよ」って返事があった。羆撃退スプレーをポッケに入れた。
さあ、俺ひとりしかいないサロベツ原野に突入だ。「なにもない」を満喫するぞー(REPORTに続く)
ここは幌延ビジターセンター。ここからサロベツ原野へ向かう。
今回は案内図のルートを歩くつもり。
良く晴れた空。少しだけ風が吹く。誰もいないサロベツ原野。
快調に原野を歩く。登山と違って登りがないので楽ちん。
この穴は「ヤチマナコ」。落ちたらヤバい恐ろしいヤツ。
底なし沼が点在する、これが秘境だ。
右に長沼を眺めながら進む。
長沼は黒い沼。なにが潜んでいるのか想像すると楽しくなる。
(あとでちょっと分かる)
おお、これがさっき言っていた行き止まりか。
確かにこの先の木道は少々荒れているな。
約束通り、無理をしない程度で進ませていただく。
もし俺になにかあったらビジターセンターの人に迷惑がかかるからな。
ここは湿原。常に湿っている場所だ。
人の手が入らないと木材は簡単に朽ちる。
気のせいかもしれないが、行き止まりの先は樹木が生い茂っているようだ。
周囲があまり見渡せなくなってきた。
先ほどから吹いている「ちょっと」の風がイイ感じだ。
北限の原野に吹く風は、太古からの風に感じる。
縄文時代も現代も、ここでの風は変わっていないんだろうな。
何言ってるか分かんねぇだろ? 俺も何言ってるか分かんねぇ。
木道の状況。まだ歩行ができる。
ここで先ほどの会話が蘇る。
「ヒグマいないっすよねー」「いるよー」
そろそろ木道が怪しくなってきた。
木道の横はズブズブの箇所もあり、出来れば落ちたくない。
怪しくなってきたのは木道だけではない。
木道に覆いかぶさる草木のせいで道がよく見えない。
冗談じゃなく、これではヒグマが接近してきても全くわからない。
前後左右全部見えない。
それでも頑張って進んだが、ここで限界。
前に道があるはずなのだが、目視が不可能になった。
間違えて黒い沼に落ちる前に引き返す。
先ほどのコースは、この「パンケ沼」がゴールであった。
残念だが車で来た。
沼に潜んでいる生き物についての看板があった。
鉄魚というのか。知らないなぁ。サロベツ原野ならではの種なんだろうか。
「鉄魚にはいろいろな説があり正体はまだわかっていません」
うーん、まさに秘境だ。
パンケ沼超しに利尻富士が見える。
今日も楽しかった。ありがとう、サロベツ原野。
(おしまい)